大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1888号 判決

被控訴人は右「つばき」の油絵を一たん十五万円で売却することを控訴人に指図したが後にこれを撤回したと主張するけれども右各被控訴人本人尋問の結果中これに添う供述は何れもそのまま信用するわけにはゆかない。むしろ被控訴人は本件貸金の弁済期を過ぎた後昭和二十六年十月頃までは控訴人ならびに稲垣に対し何ら右油絵の返還を求めたりその他売却の条件について新たな申入れなく過ぎていたことが原審(第二回)ならびに当審における被控訴人本人尋問の結果やこれにより成立を認めうる甲第三号証、当審における控訴人本人尋問の結果からうかがわれるので、これによると昭和二十六年八、九月ごろにおいても、被控訴人は控訴人に対し右「つばき」の油絵を十五万円ならば他に売却してその代金の一部を本件貸金の弁済に充当しても差支えない旨の意思表示を維持していたものと認められる。もつとも控訴人が三宅にこれを売却した価額は前記の如く十四万五千円で被控訴人の指値より五千円やすいけれども、被控訴人の十五万円という指値は、特に右五千円でも不足すれば絶対に他に売却してはならぬというほどきびしいものと解すべき特段の事実の認められないのみならず、借用金債務の担保として預けてあり、債務の弁済はこれも換価してするほかないとうかがわれる前認定のような事情の下にあつてはむしろ右十四万五千円で本件「つばき」の油絵を売却することは被控訴人が控訴人に与えた油絵処分の権限の範囲内と認めるのを相当とする。さきに右「つばき」を他の二点の油絵とともに売却のため交換会に出品したとき金八万円の買値が付けられたが、被控訴人は売却を承諾しなかつたことは前段認定のとおりであるけれども右は八万円という買値が意に満たなかつたためであること明らかであつて、これをもつて他の機会において控訴人がこれを売却することを絶対に禁じたものとなすことはできない。

(藤江 谷口 浅沼)

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